秋田

秋田

天気予報では、日本海側は大雪になり、最大級の警戒が必要だという事を告げていた。
今度の旅は、大雪を伴った。
高知を訪れた時は、東京に台風が直撃したさ中だったが、今度は日本海側に低気圧が覆ったその翌日の早朝、東京を旅立った。
日本海側から新潟から羽越本線で、秋田を目指そうとしたが運休となり、福島、山形から奥羽本線で秋田を目指した。
東京を離れてゆくうちに、次第に雲は灰色と厚さを増し、黒磯を抜けると、白い破片が舞うようになった。そして、新庄に着いた頃は、想像もしていなかった位の猛吹雪になった。秋田に向けて走り出した頃、日が暮れ始めた。走り去る車窓から見える真っ白の世界の中、ぽつりぽつりと白の合間に光が透けて見えた。厳しい土地に人が生きているのだという証だった。存在論も、価値観も異なる、異世界に迷い込んだ気がした。ただ、車内に聞こえる日本語だけが、ここは日本であるという唯一の頼りだった。その光景にカルチャーショックを受けた。それと共に自分の旅立ちを肯定した。
夏の日には見せない厳しい姿、このような土地に住む意味はあるのかと思い、生きる意味は、存在は、もっと広義で深い気さえした。東京でたまに見る雪は美しいとまで感じたが、東北の雪は、破壊的に思えた。脅威と共に生き、脅威に従って共存する、それは、グローバルに広がったコロナの脅威と生きるという事と同じではないか。生きる事そのものに、淘汰に逆らう事のない知恵が、その地に生きる人々にはあるのだと思った。
 ふと目にした携帯電話の天気予報には、秋田に警報が発令されていた。
白銀を色濃くする世界と、迫りくる闇。不安定で、不安、未来が予測出来ない位の厳しい現在の世界の姿。
世界の現在が雪の姿を借りていた。
きっとこの土地に生きる人達は、本当は雪が大変だなんて思わない。これだけ、情報網も、交通網も発達した現代なら、簡単に雪のない土地に引っ越せる、そういう時代だ。
自然の中で、自然と共に生きる。自然の本質に逆らうことなくその本質に従う。それはまさに適応という本質が垣間見れた瞬間だった。
秋田駅に着いた、青と赤のなまはげが出迎えてくれていた。
秋田の雪は、未明には止んでいた。
街の中心なのに、音がしなかった。時々、雪が崩れ落ちてゆく音がどこからともなく響いた。
明日は、今日運休していた五能線に乗るつもりだ。秋田駅の改札を抜ける時、駅員は、「五能線は明日の朝にならなければ運行するか分からない。」と私に告げた。
止んだ雪を見て、ずっと夢を見てきた五能線に明日は乗れるかもしれないと思った。
やっと、荒れ狂う日本海が見れる。
ホテルの窓から、白波に揺れる日本海が見えた気がした。

2021年12月26日 秋田

秋田

天気予報では、日本海側は大雪になり、最大級の警戒が必要だという事を告げていた。
今度の旅は、大雪を伴った。
高知を訪れた時は、東京に台風が直撃したさ中だったが、今度は日本海側に低気圧が覆ったその翌日の早朝、東京を旅立った。
日本海側から新潟から羽越本線で、秋田を目指そうとしたが運休となり、福島、山形から奥羽本線で秋田を目指した。
東京を離れてゆくうちに、次第に雲は灰色と厚さを増し、黒磯を抜けると、白い破片が舞うようになった。そして、新庄に着いた頃は、想像もしていなかった位の猛吹雪になった。秋田に向けて走り出した頃、日が暮れ始めた。走り去る車窓から見える真っ白の世界の中、ぽつりぽつりと白の合間に光が透けて見えた。厳しい土地に人が生きているのだという証だった。存在論も、価値観も異なる、異世界に迷い込んだ気がした。ただ、車内に聞こえる日本語だけが、ここは日本であるという唯一の頼りだった。その光景にカルチャーショックを受けた。それと共に自分の旅立ちを肯定した。
夏の日には見せない厳しい姿、このような土地に住む意味はあるのかと思い、生きる意味は、存在は、もっと広義で深い気さえした。東京でたまに見る雪は美しいとまで感じたが、東北の雪は、破壊的に思えた。脅威と共に生き、脅威に従って共存する、それは、グローバルに広がったコロナの脅威と生きるという事と同じではないか。生きる事そのものに、淘汰に逆らう事のない知恵が、その地に生きる人々にはあるのだと思った。
 ふと目にした携帯電話の天気予報には、秋田に警報が発令されていた。
白銀を色濃くする世界と、迫りくる闇。不安定で、不安、未来が予測出来ない位の厳しい現在の世界の姿。
世界の現在が雪の姿を借りていた。
きっとこの土地に生きる人達は、本当は雪が大変だなんて思わない。これだけ、情報網も、交通網も発達した現代なら、簡単に雪のない土地に引っ越せる、そういう時代だ。
自然の中で、自然と共に生きる。自然の本質に逆らうことなくその本質に従う。それはまさに適応という本質が垣間見れた瞬間だった。
秋田駅に着いた、青と赤のなまはげが出迎えてくれていた。
秋田の雪は、未明には止んでいた。
街の中心なのに、音がしなかった。時々、雪が崩れ落ちてゆく音がどこからともなく響いた。
明日は、今日運休していた五能線に乗るつもりだ。秋田駅の改札を抜ける時、駅員は、「五能線は明日の朝にならなければ運行するか分からない。」と私に告げた。
止んだ雪を見て、ずっと夢を見てきた五能線に明日は乗れるかもしれないと思った。
やっと、荒れ狂う日本海が見れる。
ホテルの窓から、白波に揺れる日本海が見えた気がした。

2021年12月26日 秋田

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