日本橋
日本橋
過ぎ去った風は、元には戻って来ない。
それが、ずっと風の存在だと思ってきた。
繊細さの限りを尽くした光の中、日本橋に戻って来ない筈の風が戻って来ていた。
繊細さを壊さないようにそっと、誰にも気付かれないように、瞳の中にその風は紛れ込んだ。
風が紛れ込んだ後、過ぎ去る前の全てが、瞳の中に浮かんでいた。
ただ、その瞳の中を見つめていれさえすれば、過ぎ去った過去は、そこにあるのだと教えてくれていた。
もう、過ぎ去った風を追って、私はどこか探しに行く必要はない気がした。
日本橋の夜は、春なのに、桜さえ咲いているのに、浮かれてはいなかった。
重々しい歴史的な時間。
幾重にも重ねた繊細さに磨かれた空間。
それらが誰かの手によって、幻かのように置かれていた。
一緒に見た事のない日本橋の光景。
日本的な究極の美を広げるその空間と時間に、私は幸せを感じた。
漂う桜の香り。
本当は、風は元に戻って来れるのかもしれないと、生まれて初めて感じた。
2023年3月23日 東京
日本橋
過ぎ去った風は、元には戻って来ない。
それが、ずっと風の存在だと思ってきた。
繊細さの限りを尽くした光の中、日本橋に戻って来ない筈の風が戻って来ていた。
繊細さを壊さないようにそっと、誰にも気付かれないように、瞳の中にその風は紛れ込んだ。
風が紛れ込んだ後、過ぎ去る前の全てが、瞳の中に浮かんでいた。
ただ、その瞳の中を見つめていれさえすれば、過ぎ去った過去は、そこにあるのだと教えてくれていた。
もう、過ぎ去った風を追って、私はどこか探しに行く必要はない気がした。
日本橋の夜は、春なのに、桜さえ咲いているのに、浮かれてはいなかった。
重々しい歴史的な時間。
幾重にも重ねた繊細さに磨かれた空間。
それらが誰かの手によって、幻かのように置かれていた。
一緒に見た事のない日本橋の光景。
日本的な究極の美を広げるその空間と時間に、私は幸せを感じた。
漂う桜の香り。
本当は、風は元に戻って来れるのかもしれないと、生まれて初めて感じた。
2023年3月23日 東京