夜の海と同じ色の友達
夜の海と同じ色の友達
天気予報を確かめに、深夜の漁港に向かった。
漆黒の向こうは、風もない、波もない、音もしない真っ黒な海だった。
夜の海と同じ色の友達が向こうを向いて待っていた。
遅刻したのを怒っているみたいで、風がないことも、波がないことも、海から音もしない夜さえも気に入らないみたいだった。
漆黒の海から、そこだけポツンと小さな海が別離してしまっていた。
音のない中で離れ離れになった、小さな夜の海の姿をずっと見ていたかった。
漆黒の海の方には戻らせたくなかった。
夜の海と同じ色の友達を振り返らせたくはなかったけれど、どうしても、暗闇の向こう側が気になって近づいた。
振り返った。
キョトンとした目と目が合った。
「天気予報の通り、風もない、波もない、音もしない海だね。」
と問いかけた。
夜の海と同じ色の友達が、ゆっくりと立ち上がり、真っ黒な海のほうに歩き始めた。
「また、同じ色の元に戻るね。」
そう言ったみたいだった。
後ろを振り返ることもなく、漆黒に向かう夜の海と同じ色の友達に、
「またね」
と言った。
風もない、波もない、海から音もしない夜に孤独を感じた。
2023年8月30日 東京
夜の海と同じ色の友達
天気予報を確かめに、深夜の漁港に向かった。
漆黒の向こうは、風もない、波もない、音もしない真っ黒な海だった。
夜の海と同じ色の友達が向こうを向いて待っていた。
遅刻したのを怒っているみたいで、風がないことも、波がないことも、海から音もしない夜さえも気に入らないみたいだった。
漆黒の海から、そこだけポツンと小さな海が別離してしまっていた。
音のない中で離れ離れになった、小さな夜の海の姿をずっと見ていたかった。
漆黒の海の方には戻らせたくなかった。
夜の海と同じ色の友達を振り返らせたくはなかったけれど、どうしても、暗闇の向こう側が気になって近づいた。
振り返った。
キョトンとした目と目が合った。
「天気予報の通り、風もない、波もない、音もしない海だね。」
と問いかけた。
夜の海と同じ色の友達が、ゆっくりと立ち上がり、真っ黒な海のほうに歩き始めた。
「また、同じ色の元に戻るね。」
そう言ったみたいだった。
後ろを振り返ることもなく、漆黒に向かう夜の海と同じ色の友達に、
「またね」
と言った。
風もない、波もない、海から音もしない夜に孤独を感じた。
2023年8月30日 東京