生き様

生き様

 私は、幸せだ。
不幸と思うから不幸なのであって、苦しいと思うから苦しい。
そう、考えた時、何を苦しみ、何故、これまで不幸と思ってきたのだろうかと我に返った。
それから、精神的に苦しまなくなった。
孤独も感じなくなった。
そして、不幸ではなく、ふつふつと心の底から湧き上がる、幸せと感じるようになった。
私は、幸せだ、そう思うから、私は幸せ、それだけなんだと確信した。
単純でありながらも、その心境にたどり着くまでは、私は壮絶な精神的な苦悩を味わった。

 年末、大雪の東北を訪れてから2週間後、年が明けて再び東北を訪れた。
大雪ではなく、青空を望む美しい時間の下だった。
その日、米坂線で坂町から米沢に抜けた。途中、今泉駅で一両編成の列車とすれ違った。
車両には度肝を抜かれるような色彩で、沢山の花が描かれていた。地元の人が乗っている姿は、シュールささえ感じた。
けれど、なんだか芸術的で、なんとなく素朴で、心が温まるような光景だった。
300㎞を超えるスピードなんて、関係ない、15両編成にグリーン車まで繋ぐのだけが、鉄道ではない。
一両で雪国の大地を行く姿は、光の中で輝いてるように見えた。
まだ、精神的に喘ぎ抜き苦しんでいた頃、午前二時過ぎ、孤独を紛らわそうと街に出た。日本橋の裏側、昭和通りを渡る地下道へと歩を進めた。
中は、しんとしていた。都会の孤独さがあった。その孤独感にたまらなさを感じた。地下道の両端に、5、6つ位段ボールが置かれていて、そこで人が寝ていた。
衝撃的な光景だった、そして、諦念という東洋の哲学をまざまざと見せつけられた気がした。嫌悪とか、排除ではない、あの空間で、ここに東洋の哲学があると感じ、強い興味と探している何かに会えた気がした。これが、実は探している哲学なのではないかとさえ感じた。
あれから、数年が経ち、コロナ禍においてグローバル世界では劇的な変化が生まれ始めた。
その中での東北地方への旅になった。
大雪の中で、東北の厳しい自然と生きる人々、その姿に日本の哲学的本質を見た。そして、東北という地に魅せられた。
あの地下道で、哲学に会った時と同じくらいの衝撃を受けた。
美学ではない、哲学の本質が胸を打った。

 「ことこと」と走り去る一両の列車は、白銀に咲く花束だった。
淘汰されて行く時代の中で、それでも、生き延びようとする生き様が自分と重なった。
この駅に着く前、白鳥たちが真っ白な世界で群れを作っていた。嘴と目だけが、白い世界に別の色をもたらしていたのが、かわいく見えた。ここは、魔法の国だと思った。
 苦しみも、悲しみもない魔法の国に私は、紛れ込んだ。
その瞬間、私は幸せだと感じた。

 雪原を走り去る花束に、その生き様が好きだと心の中で告げた。

2022年1月15日 東京

生き様

 私は、幸せだ。
不幸と思うから不幸なのであって、苦しいと思うから苦しい。
そう、考えた時、何を苦しみ、何故、これまで不幸と思ってきたのだろうかと我に返った。
それから、精神的に苦しまなくなった。
孤独も感じなくなった。
そして、不幸ではなく、ふつふつと心の底から湧き上がる、幸せと感じるようになった。
私は、幸せだ、そう思うから、私は幸せ、それだけなんだと確信した。
単純でありながらも、その心境にたどり着くまでは、私は壮絶な精神的な苦悩を味わった。

 年末、大雪の東北を訪れてから2週間後、年が明けて再び東北を訪れた。
大雪ではなく、青空を望む美しい時間の下だった。
その日、米坂線で坂町から米沢に抜けた。途中、今泉駅で一両編成の列車とすれ違った。
車両には度肝を抜かれるような色彩で、沢山の花が描かれていた。地元の人が乗っている姿は、シュールささえ感じた。
けれど、なんだか芸術的で、なんとなく素朴で、心が温まるような光景だった。
300㎞を超えるスピードなんて、関係ない、15両編成にグリーン車まで繋ぐのだけが、鉄道ではない。
一両で雪国の大地を行く姿は、光の中で輝いてるように見えた。
まだ、精神的に喘ぎ抜き苦しんでいた頃、午前二時過ぎ、孤独を紛らわそうと街に出た。日本橋の裏側、昭和通りを渡る地下道へと歩を進めた。
中は、しんとしていた。都会の孤独さがあった。その孤独感にたまらなさを感じた。地下道の両端に、5、6つ位段ボールが置かれていて、そこで人が寝ていた。
衝撃的な光景だった、そして、諦念という東洋の哲学をまざまざと見せつけられた気がした。嫌悪とか、排除ではない、あの空間で、ここに東洋の哲学があると感じ、強い興味と探している何かに会えた気がした。これが、実は探している哲学なのではないかとさえ感じた。
あれから、数年が経ち、コロナ禍においてグローバル世界では劇的な変化が生まれ始めた。
その中での東北地方への旅になった。
大雪の中で、東北の厳しい自然と生きる人々、その姿に日本の哲学的本質を見た。そして、東北という地に魅せられた。
あの地下道で、哲学に会った時と同じくらいの衝撃を受けた。
美学ではない、哲学の本質が胸を打った。

 「ことこと」と走り去る一両の列車は、白銀に咲く花束だった。
淘汰されて行く時代の中で、それでも、生き延びようとする生き様が自分と重なった。
この駅に着く前、白鳥たちが真っ白な世界で群れを作っていた。嘴と目だけが、白い世界に別の色をもたらしていたのが、かわいく見えた。ここは、魔法の国だと思った。
 苦しみも、悲しみもない魔法の国に私は、紛れ込んだ。
その瞬間、私は幸せだと感じた。

 雪原を走り去る花束に、その生き様が好きだと心の中で告げた。

2022年1月15日 東京

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